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オリジナル小説掲示板

2009-02-26 開始

いろ×2な小説つくっちゃおうぜ☆

No.作成者
2008-09-28 22:32:36

トピ名どうり、いろんなジャンルの小説を作るところです!
恋愛でもファンタジーでも!
なんでもokです!
ぞんぶんに小説作りを楽しんでください!

それと、誰かが小説を書いた場合は必ず、遅れてもいいので、感想を書いてあげてください。

No.729
2009-10-29 17:41:04

レッド・ロッド
 キアヤは、ちら、とクロナを見た。少しは顔を歪めるだろうと思ったから。でも、異常なほどにクロナは無表情で、時折うっとりした笑みを広げる。
(シヴァさん、聞こえますか、クロナさん、絶対変です。バレットさんよりも・・・ずっと暗い過去を持ってます。調べる価値はありますよ)
 キアヤは普通に頭のいいリューズに駆け寄る。
「リューズさん、クロナさん、やっぱり変です。たまに助けを求める人を何の躊躇もなく殴るし、相当人間嫌ってます」
「・・・ふぅん。じゃあ、うちにはぴったりだな。過去にそれ相応の暗さがあれば、ずっと役に立ってくれるし」
 相変わらずほんにゃりした笑みを広げるクロナ。
 それを、気の紛らわしと偽りのない幸せの入り混じった笑顔だとは、シヴァも気づかなかった。
「っ・・・気持ち悪い・・・」
 ヴァンパイアとなって一週間も経っていないのに、大量の血臭の中を立たせるのは無理があった。
 人間の嗅覚と考えも持ち合わせたクロナには、きつかったのだ。
「は・・・ぁっ・・・くぁっ・・・あぁ・・・はっぁ・・・あ、あぁあぁっ、ああぁぁああぁあぁああぁ!!!」
 そして、サイコキネシスが暴走した。

No.730
2009-10-31 12:37:20

第6話【3年5組の同居人】
「それって…」
「そ。花子のことさ。壱の不思議はトイレの花子。弍の不思議は音楽室の三つ子。七不思議に出てくる幽霊は今もこの学校にいる地縛霊なんだ!」
「……ふ~ん」
「………ってリアクションそれだけ?」
俊は明らかにがっかりしてうなだれた。
「なんで誰も驚かないんだよ~」
「面白い話だけど、驚くほどではないから」
素直に答える七紫。さらに落ち込む俊を見て、小さく笑うものがいた。
「七紫様」
「うわっ、デートルさん!?いきなり出て来ないでくださいよ、マジびびった」
俊の大袈裟なリアクションに苦笑しながらデートルが現れた。
「部屋が決まりました。3‐5の教室で同居人がいますが大丈夫ですか?」
「3‐5…ってもしかして真夜の部屋?」
「シンヤ?」
「はい、吸血鬼の真夜様です」
「七紫隣じゃん!俺の部屋、3‐4。遊び来いよ!」
「うん…吸血鬼って…?」
「あ、大丈夫大丈夫、真夜は変わってるけど気はいいから」
少し不安な七紫をからかうように、人魂がフワリと耳元をかすめていった。

No.731
2009-11-01 16:36:41

第7話【マイペースな吸血鬼】
「こちらです」
軋んだ音をたてて3‐5の扉が開いた。中は真っ暗で、誰かがいる気配はない。
「真夜~起きてるか~?」
七紫達が部屋に入るとバサバサと音をたてて一匹のコウモリが飛んだ。立ちすくむ三人を見てクスクスと笑う人影。
「いらっしゃい、七紫くん。それとバカ犬、僕は24時間寝てるわけじゃない」
暗闇から浮かび上がるように現れたのは顔色の悪い小柄な少年だった。悪戯っぽく輝く瞳はワインのような濃い赤。ボサボサにはねた髪は黒だが、一房だけ艶やかな深紅に染まっていた。
「“仕事”の下調べに行って、帰ってきたばっかしなんだよ。七紫くんよろしく、吸血鬼の真夜です」
「よろし…「あ、電話」
真夜は黒い最新のケータイを取り出して通話ボタンを押す。
「ん?…よ~優斗か!……ああ仕事?明日。…へぇ、そっちも…うん、OK。秀哉は?…ッハハ!マジ?」
そこで真夜は七紫達の存在を思い出したようだ。
「あ、同居人が来たからきる。は?…ああそれはヘーキ。……うん、バレても大丈夫。…いや、まだ。だって今日からだし………へぇへぇ、んじゃ明日な~」
「俊…真夜さんって……」
「うん、いっつもこんぐらいマイペース。まあ慣れたら面白いぜ」
「バカ犬は黙って。七紫くん、ゴメンね。ちょっと仕事上こーゆー打ち合わせが必要なんだ。今のは同業者」
ニッコリと微笑む真夜。
(……悪い人じゃなさそうだし……まあ何とかなるかな)
「ちなみに盗賊やってます☆」
(………やっぱりとんでもない人だった…)
そう思いながらも、七紫が隣になってはしゃぐ俊と空き部屋を探してくれたデートルに嫌とは言えない七紫は、結局めでたく(?)3‐5への入居を決めたのだった。

No.732
2009-11-01 19:08:11

かなs>幽霊が主人公って珍しいっていうか、なんていうか、新鮮ですね!アイデアが斬新で面白いです!
 オオカミ俊君が可愛い!!

No.733
2009-11-01 19:12:50

三日月さん>
ありがとうございます!あ、あとうちのことは呼びタメでいいですよ!名前は好きな呼びかたで呼んでください。
俊は弟がモデルですけど弟はこんなかわいくないです(笑)

No.734
2009-11-01 19:34:51

レッド・ロッド
「シヴァ!?クロナ、どうしたの!?」
「・・・暴走した。あんな顔してたら、普通気がつかないっつーんだよ・・・いきなり連れてくるのはやっぱし無理があったか・・・。ジン、クロナの思考、読めるか」
 ジンはゆっくり目を閉じ、こめかみに右手を置く。
「・・・いやだ、あのときと大差ない、キーのときと、何も、変わらない、私は血なんか、好きじゃないんだ、この手で、ただ、相手の身体を折り壊すのが好きなだけだ、私は血の匂いが嫌いだ」
「っと・・・シヴァ、どうする!?あいつの暴走、俺らよりすげえぜ!!?」
「・・・そうだな。あいつを血に慣れさせるのは難しそうだ・・・♥」
「シヴァさん、気持ち悪いですよ?」
「な・・・キアヤぁ!シヴァさんは気持ち悪くなんかないぞ!ただちょっとドSなだけだ!」
「リューズ、屋敷に戻る。あっちには超能力のプロテクトが張ってあるから、少しは治まるだろ。あと、クロナの教育は任せた」
 超適当な命令に、リューズはうなだれる。
「めんどくせー。しゃーねぇな。銃弾馬鹿野郎、さっさと撃て」
「お前に馬鹿とは言われたくないな、根馬鹿のくせに」
「あぁ!!?もう一回いってみろ!吹き飛ばすぞ!」
「わー、うるさいうるさい―」
「屋敷行ったらぶっ殺してやる!!!」

No.735
2009-11-01 19:46:26

三日月さん>
732訂正を忘れてました。七紫は幽霊ではなく妖精です。別に妖精じゃなくてもいいんですけど生きてるってことにしとかないと後々ストーリーに影響が出るので。
あと最近詳しいキャラ設定を考えたので一度プロフィールを載せたキャラもまた書き直すかも知れません。
三日月さんの小説は笑えるとことか緊迫感のあるとことかメリハリがあって面白いです!続き楽しみに待ってます!

No.736
2009-11-01 20:28:43

かなs>妖精・・・!?
 くそ、可愛い!!

No.737
2009-11-01 20:39:01

三日月さん>
まだまだ未登場のキャラはたくさんいるんで楽しみにしてください。近いうちに出せそうなのはクモ女のアキさんと七不思議の霊の一人の桜ちゃんと同じく七不思議のオッサン幽霊の田中くらいですね。
真夜の姉の魔夜とか双子のバケネコのミルク&シュガーとかはちょっと先になりそう……。

No.738
2009-11-01 20:45:35

レッド・ロッド オマケ小説?
「ったく、何で俺が・・・」
 リューズは、椅子に座って肘かけに肘をつき、頬杖をついていた。
「こんな取り扱い注意物質の世話なんかしないといけねーんだよ、くそ・・・!」
 ベッドで未だ寝息をたてているクロナを、渋々見守るリューズ。
「シヴァもリーダーのくせに人の扱いよくないしな・・・ドSだし。俺も昔はよく・・・」
 精神に致命傷を負ったもんだ。
「それに・・・この組織内で女っていないんだよな・・・」
 リューズの最大の悩みだった。
 よく世話役は任せられるリューズ。それでも相手は同性だけで、異性の面倒をみるのは初めてなのだ。
 ・・・ああ、めんどくさ。
 何気なく窓を開けると、中庭でシンとシヴァが木陰でのんびりしていた。・・・シンがシヴァの膝枕ですやすや寝ているのが見えた。
 うっわ、ムカつく。
「・・・なに、してんの」
「ひっ!!?」
 ベッドの方を振り向くと、赤い髪と真紅の瞳を輝かせたクロナが上半身を起こしてこっちを向いていた。
「び・・・っくりした・・・」
「お前・・・リューズっつったっけ・・・聞きたいことがあるんだけど、さ」
「・・・何?」

No.739
2009-11-01 20:58:41

オマケ小説続き
「・・・あの、さ」
「何?何さ。早く言えよ、あんまり改まるな」
「俺・・・このまま、ここにいてもいいのかな・・・?」
「はぁ?一人称がなんで俺なのかはつっこまないけど、何でそんなこと言うのさ」
 クロナは再びベッドに転がると、目に腕をかぶせる。
「だってさ、前、暴走したじゃんか・・・あれで何人かここの奴死んだんでしょ・・・?じゃあ、俺なんか、ここの障害もいいところだろ?ここにいる意味もないし・・・」
「お前、ホントに何も知らないんだな。むしろ、暴走してくれないと困るんだぜ?暴走してくれないと、実力が分からないからな。お前のその考えは不正解。それに、シヴァ達は生きてるし、組織の中で超能力を持っているのは俺達だけ。正直のとこ言うと・・・俺達だけでも、この組織はやっていける・・・だから、その・・・俺達以外、いらないんだよ・・・」
「・・・そう・・・じゃあ・・・いい、や・・・。あとさ、お前っていうの、止めてくれる?ちゃんと名前でよんでよ、クロナかチャームでもいいからさ」
「・・・なんで?お前なんか、お前で十分だ」
「じゃあ理由を言う。不愉快」
「きつっ!!わかったよ、じゃあ・・・クロナ・チャーム・・・え、えっとぉ・・・く、クロナ!」
 リューズは顔を真っ赤にして言う。
「こ、これでいいんだろ!」
 腕を組んで、クロナから顔をそむけた。
「・・・可愛い、奴」

No.740
2009-11-01 21:17:21

第8話【食堂にGo!】
デートルが仕事に戻り一時間、真夜と七紫はすっかり打ち解けていた。俊が嬉しそうにしっぽをパタパタと振る。そのときグゥルルキュ~と俊のお腹が鳴った。
「真夜、七紫、腹減ったから食堂行こう!」
「いいね~、んじゃ僕今日はカレーにしよ。俊と七紫はどーする?」
「ん…っと俺トンカツ食いてー!」
「……食堂?」
「うん、クモ女のアキ姐さんがなんでも作ってくれるよ。美味い、素早い、栄養バランスも最高!!」
「俺とか肉料理しか頼んでねぇのに気づくとサラダ食ってるんだよな~」
「へぇ。…じゃあ、あの……アイス……あるかな?」
「「アイス?」」
俊と真夜に見つめられて七紫は真っ赤になった。
「一回だけ…食べたことあって…///」
「そりゃアキ姐なら作れるだろうけど…なんか意外~!」
俊と真夜に笑われてさらに赤くなる七紫。
「あ、ほら着いたぜ」
「え?ここって……」
二人が立ち止まったのはA棟の一階の隅の教室……“ミーティングルーム”だったのだ。

No.741
2009-11-01 21:23:33

レッド・ロッド
「リューズさん、血ぃください!」
「ん」
 立ててあるスーツの襟を曲げ、白い首をあからさまにさらけ出した。
「・・・どうしたんすか?今日はやけに素直ですね?」
「なんか・・・暇・・・?」
「クロナさんの面倒見ですか?そうですねー。じっと見守るだけなんて、退屈ですよね。じゃ、いただきまーす」
 キアヤはリューズの肩に手をかけ、首に軽く、深く牙を立てた。
 ブツッ・・・
「いった・・・。キアヤさ、何で俺の血ばっか飲むの?」
「らってリュージュひゃんの血あみゃくへおいひいんれすもん(だってリューズさんの血甘くておいしいんですもん)」
「あっそ・・・」
「あ、リュージュひゃんのよんれるしょの本、ひゃんひぇいもにょれすよね?そにょ本の犯人て(あ、リューズさんの読んでるその本、探偵物ですよね?その本の犯人て)」
「言うな!読みがいなくなるだろ」
「ちぇー、ネタばれしたときのリューズさんのリアクション、面白いっていうか可愛いのにぃ」
 キアヤはリューズの首筋から牙を抜き、血塗れの唇をスーツの袖でぬぐった。
「ここにいてもいいっすか?」
「・・・いいけど?」
「あれ?今思ったんですけど?ジンさんは?サイコメトラーいないといつ目ぇ覚ますかわかんないじゃないですか」
「それがさぁ・・・資金が底を尽きかけたからカジノでひと儲けしてくるんだと」

No.742
2009-11-03 17:16:40

コイルス・ファンタジー
「・・・記憶を止める能力・・・?」
「うん・・・記憶を塗り替えたり、消したりする能力ってあるんでしょ?『記憶操作』・・・だっけ」
 梨厨が出した提案。
「でも・・・コピー能力じゃ少し弱くなるし・・・フィーロからもらったけど、フィーロも独自空間作成能力の方が・・・」
「あ」
「おいイオン、なんでそれもっと早く気付かなかった?」
「いやだって、頭いっぱいで・・・!一応空間は作っとくけど!その方が集中出来るし・・・」
「・・・校長は?」
「へ?校長って能力持ってたのかよ、新見」
「いや・・・うん。説教で呼ばれたときに偶然立ち聞きして。リミッターで呼べばいいじゃん」
「不良三人集、お前らさっさと呼べ」
「ひっでえ」

「・・・で?何?記憶操作?」
 校長を直々に呼びだした。
「あぁ・・・クルーゼの・・・。こいつ、細川じゃん!何でいるの?懐かしー!」
「こぉちょぉぉ!!」
「ああハイハイ。見せてみー?」
 校長、藍善は、リオンの額に指先を当てる。
 これで、校長若っ!!と思った人もいるだろう。

No.743
2009-11-03 17:39:17

第9話【アキ姐のオムライス】
「なんでミーティングルーム…?」
「さあ?机がデカイからじゃね?アキ姐、トンカツ~!」
「あいよ」
ドアを開けるとそこには妖達がひしめいていた。みんな好き勝手なものを食べて騒いでいる。その奥で忙しそうに八本の腕を動かす美女―――クモ女のアキだ。
「新入りだね。七紫…とか言ったっけ?」
するすると一本の腕が伸びて来た。アキの腕は伸縮自在らしい。
「あ…はじめまして……」
七紫がぎこちなく握手する間も、他の腕は卵を割ったり鍋を掻き混ぜたりしている。火をだしているのは甲羅のかわりに炎をせおったカメの妖怪。卵の殻や残飯を美味そうにぱくついていた。
「カレー!辛いヤツね」
「俊、あんたいっつも肉だね。たまには野菜も食いな。真夜、顔色悪いけどカレーだけでいいのかい?で、七紫は何がいい?」
アキは切れ長の目をチラリとこちらに向けながらスープの味見をする。不満だったのか、顔をしかめると見た目かなり怪しい液体をいれた。
「えっ…と「七紫、アイスが食いたいんだってさ。主食はなんでもいいよな?」
「……うん。ありがと」
しばらくして出てきたのはオムライスだった。イチゴのシャーベットがおいしそうにきらめく。
「美味い?」
「………うん、美味しい」
「あ!七紫が笑ったとこ初めて見た!」
真夜に指摘されて初めて自分が微笑んでいたことに気がつく七紫。ふんわりとしたオムライスの味。今まで食べたことがなかった味だ。七紫は記憶を失って以来、人間にかなり酷い目にあわされ、ろくなものを食べられなかった。
「初めて…食べた」
夢中でオムライスを頬張る七紫を、アキが優しい目で見守っていた。

No.744
2009-11-08 10:14:39

レッド・ロッド
「あー・・・サイコメトラーは物の使い方とかタイミングまでわかっちゃいますからね・・・」
「シンはシヴァにつきっきりだし・・・かと言ってどっか行ったらその隙に逃げられるのも困るし・・・」
「・・・逃げたりしないよ・・・どうせ追いかけてくるんだろ・・・後で・・・そんなことになったら・・・面倒臭い・・・で、私は何をすればいい・・・?」
「まず下に降りてシヴァに起きたこと正銘しろ。俺も眠い」
 リューズは寝ずにつきっきりでクロナを見ていたため、睡眠時間を大幅に削っている。
「いってらっしゃい☆僕はリューズさん見てますから☆」
「・・・仲、いいんだな」
「はい、僕、リューズさんの一番最初の後輩ですから」

「シヴァ・・・おはよ」
「起きるの遅いぞ。リューズは二日で起きた」
「あー・・・そう?全然実感ない」
「ってゆーか、クロナ!お前、シヴァさんに向かって失礼だぞ!」
「・・・シン、うるさい」
「あ、ちょ・・・バレット!そんなこと言ったら俺の立場無いに等しいだろ!」
「うるさいのは事実・・・」
「バレット、ほっとけ。こいつずっと外見てたんだから」

No.745
2009-11-08 18:57:43

幽霊学校 第十話【白い夢の少女】
その夜のこと。満腹になった七紫は穏やかに眠っていた。夢の中には俊や真夜の顔が浮かぶ。――その夢が、突然変わった。
『な…なし……くん』
場面が変わる。真っ白な部屋だ。夢だというのに妙にリアルで、部屋の中心に一人の少女が立っていた。白髪に白いワンピース。目には白い布。盲目なのだ。
『聞こえる?七紫くん』
「……君は?」
『あたしは夢魔の一種よ。名は聞かないで。あたしの力は弱いからあと少ししかいられないの。お願い、力を貸して』
「君も……この学校に……?」
『あたしの身体はずっと昔に滅びたわ。魂だけが夢の世界に残ってるの。……あの人のために』
「あの人……?」
少女が突然悲鳴を上げた。苦しそうな顔が徐々に消え失せていく。
『お願い、あの人に、レゾンに伝えて。………!』
何かが弾ける大きな音がした。同時に七紫は目が覚める。部屋には何の変哲もなく、真夜の好きな紫と黒のカーテンが揺れていた。
「………?」
満月に近い月が明るく輝いている。さっきまでの夢は、本当にただの夢だったのか、それとも……。
「…『死神が動きだす』……?」
白い夢の少女が、最後に残した言葉。翌日、この謎を解く人外の者が幽霊学校を訪れるなど、七紫は知る由もなかった。

No.746
2009-11-10 16:57:39

レッド・ロッド
「全体任務?」
「あぁ。つっても能力を持っている奴だけのな。クロナが寝ていた時、シンがキャッチしたんだ。場所はシカゴのノワール一族屋敷。ヴァンパイアの一族だ。今回の任務は、屋敷にいる人間能力なしのヴァンパイアの皆殺し。能力持ちはどんな手を使ってでも捕獲しろ。異論はないな。わかったらさっさと行くぞ」
「リューズさん、起きてくださいよー、全体任務ですってー」
「聞いてた。シカゴのノワール家だろぉ?あそこ、ここの経営店の愚痴溢してたし。いいね、行こうぜ」
 レッド・ロッドは小さな会社でもあり、会社名を偽って大人のヴァンパイアが務めている。
(・・・リューズ、なんとなくやる気あるなぁ・・・)
「クロナ、今、リューズがやる気あるなって思ったでしょ?」
「あ゛。ちょ、汚なっ!!」
 ジンがクロナの素手を掴んでいたのだ。
 当然、心も読まれ。
「リューズの家族はさ、ノワール一族に殺されたんだよ」
「ぇっ・・・?」
「リューズはどちらかというとヴァンパイアの中では身分が下だったんだ。ノワール一族は身分の低い者を無駄に毛嫌いしてね。殺すか、自分達の奴隷にするか・・・酷いもんだよ。殺し合いの時に暴走して、シヴァのお兄さんがそれに気づき・・・今、リューズはここにいる」

No.747
2009-11-10 17:10:06

クエレ・アリュール
 シヴァの実兄。享年18歳。その時のシヴァ、6歳。
 今生きていれば27歳。
 元はチームのリーダー。
 シヴァとは相当年が離れていて、ブラコンに近いくらいシヴァを可愛がっていた。
 軽い性格で、組織内の者には人気が高かった。
 なにかと家族思いで、親にもシヴァにも優しく、シヴァへの愛情は人一倍。
 能力はシヴァと同じテレパシー。
 keyのアジトに潜伏中、あるミスをしてつかまり、vampireshot(ヴァンパイアショット)で後頭部を撃たれ即死。 
 依頼レッド・ロッドはkey撲滅部隊に変わる。

No.748
2009-11-14 07:15:10

幽霊学校 第十一話【死神・燐】
翌朝。レゾンは久々に帰って来た幽霊学校の、穏やかな朝を楽しんでいた。早朝の幽霊学校はひっそりとしている。昼間に活動する妖怪はまだ眠っているし、夜行性のもののけはもう寝たからだ。
「……?」
ふと、校門から強い気配を感じて足を止める。探ってみるとその気配には馴染みがあった。妖の間でも滅多に見かけない、珍しい一族。
「おかえり、燐」
長身痩躯のその男は、黒いマントに身を包んでいた。顔を覆い隠す仮面も黒。そして手にした鎌もやはり、刃まで漆黒に染まっていた。彼の名は燐。死神だった。
《……新たな…災厄が》
「……君が来るって事は?」
《…〈狩人〉がこの学校に》
レゾンの顔色が変わった。〈狩人〉は人でないものを排除する人間の組織。元々は人を襲う妖怪を始末するための組織だったが、最早本来の意味を見失っている。〈狩人〉は妖怪の力を手に入れるため、見境なく妖怪を捕獲していた。捕獲された妖怪はただの実験台。モルモット以下の扱いを受ける。
その話を聞いてしまった者がいた。七紫だ。
「……レゾンさん」
燐もレゾンも驚いた。声をかけられるまで、七紫の存在に気づかなかったからだ。
「……どういう…ことですか。……〈狩人〉…?」
―――七紫の記憶が蘇った。

No.749
2009-11-15 11:53:29

レッド・ロッド
「罠、超能力妨害装置なし。シン、中は?」
「ヒュプノか何かで少し妨害されてるんだけど・・・奥に階段があるって事しか・・・」

「あ、見えました。奥の階段のぼって・・・え、あれ?これどこ!?日本見える!なにこれ、戻んねえ!!」
「クレヤボヤンス?ああそれ、しばらく戻んないよ。私はリーザ・オルト。よろしく」
 少女は、長いコートで隠れていたベルトから、ナイフを二丁取り出した。
 そして、ナイフを構え、勢いよく突進してきたのだ。
「当たるかっ!」
 リューズが、テレポートで後ろに回り込もうとした。
 が、テレポートは発動しなかった。
 二秒ほど遅れて、無意識にテレポートが発動し、移動した場所は、入口近くの壁だった。下半身だけ壁の中に埋まってしまった。
「なっ・・・ちょ、クロナかバレットか、出せ!早くっ!!」
「超能力を狂わせる・・・ヒュプノか!」
「というわけだから、リューズ、ちょっとだけ待って?」
「えぇええぇ!!?」
「・・・武器でしか倒せない・・・てことか」
「そうだけど、相手の武器は確実に軽いし、動きが早いことは明確だよ?」

No.750
2009-11-15 12:11:14

レッド・ロッド
「ねえ、シヴァ。超能力って、普通意識して出すもんでしょ?」
「まあ・・・そうだな」
「じゃあ、あいつの意識を『超能力』から突き放せばいいんだ」
 武器を持っておらず、体重が軽いクロナの方が、リーザより早かった。
 リーザの鳩尾に拳を叩きこむ。
「ぅえっ!!」
「・・・OK。普通に使えるよ。リーザ・オルト。11才。ヒュプノが目覚めたのは一か月前。・・・日ぃ浅っ!武器は特に使えるものが無いので単純に軽くて使いやすいナイフにした・・・」
「ど、退けよ!!」
「・・・よかった、抜けれた。出られないと思った」
「・・・何かアメリカが懐かしい・・・」
 涙目で座り込むリューズとシン。一瞬の隙をついて抜け出たのだ。
「もう、手加減してやらないんだからね!!」
 先ほどとは比べものにならないほど速く走りこむリーザ。
「ぐぁっ!!?」
「キアヤっ!!」
 大剣を出したままだったため、避けるのが若干遅かったキアヤ。
 二丁のナイフがキアヤの腹部を掠めた。

No.751
2009-11-16 21:00:45

レッド・ロッド
「う・・・ぐっ・・・」
「・・・日が浅いとはいえ、あのナイフ、クロスタトゥーか。油断したな。キアヤ、耐えられるか」
「だいじょぶっす・・・。痛みなら、消せますから。いくらクロスタトゥーでも、一週間でなくなります」
 クロスタトゥー。ある呪文で十字架の文様を掘られた武器のことで、通常の武器(クロスタトゥーではない武器)では、ヴァンパイアはいくら切られても、やがて回復し、元に戻る。が、クロスタトゥーの武器では、心臓をまっすぐ一突きすれば、ヴァンパイアは陽に溶け死ぬ(心臓でなければどこに刺してもしなないが、治りが遅い)。つまり、クロスタトゥーは対ヴァンパイア用の武器なのだ。武器なしのクロナには、手に直接クロスタトゥーが入っている。 
「どうする?バレットはサイコキネシス効かないから危ないし」
「・・・ぁ・・・」
 キアヤは、思いついた。
 至近距離なら、関係ないんじゃね?
「何だ・・・なんか単純っすね」
 ヒュプノは、「一応」幻影能力だが、うまくつかえば死にいたらしめることだって難しくないのだ。
 キアヤは、大剣を収め、大きく円を描くように走りだした。

No.752
2009-11-16 22:26:10

幽霊学校 第十二話【フラッシュバック1】
「逃げろ!狩人だ!!」
誰かの声が響く。懐かしい森。これは……故郷の滅亡の瞬間。そう、狩人はこの美しい森と仲間を、尽く奪い去って行った。
「いたぞ!あのチビだ!!」
狩人の声。ああ、そうだった。あの日彼らが狙っていたのは自分。大人達が必死で護ろうとしていた。そして護りきれないことを悟ると、長老が僕を森の外れまで逃がしたのだった。
「逃げるのじゃ、幼き者よ。我らはこれ以上耐え切れぬ」
「じい様!嫌だ、じい様も一緒に逃げよう!僕は…独りじゃ何もできないよ…」
泣きながら訴える幼い自分を、長老は優しく引き離す。
「辛くとも、独りで歩むしかないのじゃ。そなたの持つ力は余りに重い。多くのものが望み、身を滅ぼす力じゃ。それを求めてそなたに寄るものは多いことじゃろう」
長老はもうほとんど見えない目をしっかりと開き、幼い自分を見つめた。
「よいか?そなたの力を知る者は、誰一人として信じてはならぬ。その者が求めるのはそなたではなく、そなたの力じゃ。そしてもし―――」
爆発音と共に故郷が消え失せるのが見えた。泣きながら戻ろうとする僕を、長老が抱き留めて離さない。
「もしも真の友に出会ったなら、その友にこそ力を使いなさい。さあ、もう行くのじゃ!」
長老の身体から吹き出す鮮血。断末魔の叫び。伸びてくるのは、狩人の血まみれの腕。それが最後に見た故郷の全て。
「嫌だぁあー!!!」

編集:2009/11/16 22:33:05

No.753
2009-11-22 22:10:44

幽霊学校 第十三話【屋上にて】
ジェイドは屋上に座り込み、一人で風の音を聞いていた。しばらくほったらかしだった髪がなびく。
「レゾン、気配消すな。めんどくさい」
人影のなかった屋上に突然現れるレゾン。ジェイドは特に驚かない。彼はジェイドの隣に立ち、金網にもたれた。
「キツそうだな、珍しい」
「七紫くんのおかげだよ。あの子はちょっと…とんでもないかもしれない」
「俺と同じ匂いがしたからな。結構血まみれだぞ?アイツ」
「自分に似てたから関わりたかった?」
「冗談だろ!?俺はただの傍観者だ!」
「燐にそう言われたんだね」
「………」
ジェイドをこの学校に連れてきたのは燐だ。死神は傍観者。彼はジェイドもそうあるように、と教えた。ジェイドの力は限りなく彼らに近かったからだ。
「……俺は死神だ。ただ全てを見つめ、命を管理する」
「君は死神ではないし、これから死神になることもない。見つめるだけなど出来ないし、望んでもない。君が命を奪うのは管理のためじゃない」
「黙れ!!」
「黙ったところで真実は変わらない。君は孤独だ。そして孤独を恐れてここに来て、今ようやく仲間を見つけた」
「いい加減にしろ!!!」
ジェイドは立ち上がり、周りの空気が殺気で揺らいだ。睨み合う二人を、小さな叫び声が引き離す。
「………七紫くんが、目覚めた」

編集:2009/11/24 17:57:02

No.754
2009-11-24 20:06:41

かな>ジェイドが可愛い。こんちくしょう。
 ちっこいことでいぢけそうなジェイドを嫁にください

No.755
2009-11-24 20:44:35

レッド・ロッド
「あー・・・やべ。あんまし動いたら・・・」
 またリューズさんに、迷惑かけるかも。
 クロナも結構体重が軽いが、キアヤも相当なものだ。腕力に自信がないリューズがお姫様だっこ出来る相手なんだから、相当だよ?リスクとして身長が極小で、身体が弱く、怪我をすると速効性の病気や風邪が出てくる。そのため、すばしっこさやスピードはピカイチ。
「ちょっまっ、来るな!!」
 隠し持っていたナイフを向かってくるキアヤに投げつけるリーザ。だが、キアヤは紙一重でよけ続ける。
「へへっ、お前ごときの攻撃なんて当たるかよっ!バーカ!!」
 最後のナイフを高いジャンプで避け、後に回る。
 リーザの首筋を軽くクイッと掴んだ。
「や、やめっ・・・あ、そだ、じゃあ、私が君らの仲間になるよっ!だから離して!死にたくないぃ~!!」
「だってさー。どするー?」
 もちろん、全員仲間にする気など欠片もない。超能力者になった日が浅いというのもあるし、どちらかというと戦闘に参加しなかったり、身体が弱いため一騎打ちや少数戦闘が不向きなキアヤに勝利出来なかったというのもある。
「じゃ、多数決で、お前の死刑に決定ー。罪状は無実のリューズさんの無許可拘束と、シンさんの無許可暴走。あとはー・・・「キアヤの腹ぁ傷付けたってので十分死刑確定だよ」
 爆弾を投げては取りを繰り返すリューズが言った。

No.756
2009-11-24 21:47:17

幽霊学校 第十四話【戦闘準備】
七紫が目覚めて最初に感じたのは、いつも以上の騒がしさだった。
「あ、七紫が起きた!」
真夜が七紫の顔を覗き込む。気のせいかいつもより犬歯が鋭いように見えた。俊は…。
「…俊!?」
「あ、悪ィ。びっくりしたか?」
七紫が驚いたのも無理はなかった。俊は完全に若い狼の姿になっていたのだ。人懐っこい茶の瞳以外、面影はなかった。
「カッコイイだろ~!!狩人が来るからさ、みんな戦闘態勢になってんの」
「僕は便利な能力持ってるから実戦部隊。俊は足の速さはトップクラスだけど若いからって理由で情報伝達係」
「……真夜の能力?」
「あれ?言ってなかった?僕は血を飲んだ相手を一時的にコントロールできるんだよ。吸血鬼なら誰でもできるし、細かい制限はあるけど」
「七紫は戦闘は初めてだろ?どうする?」
俊に聞かれた途端、夢の中の惨劇が蘇った。震えだす体を押さえ付け、黙ったまま首を横に振る。
「……ゴメン」
「あ、謝ることじゃないよ!?」
「そうそう!!気にすんなよ。な?」
慌てて励ます二人。しかしその優しさも、今の七紫を混乱から救い出すには至らなかった。
『狩人接近中!到着まで残り30分!!全員戦闘配置につけーッ!!』
コダマの声が廊下に反響する。真夜は声を聞くなり飛び出していき、俊も七紫に鼻をこすりつけて走り去った。あっという間に校舎が静まり返る。ひとりになった七紫は、ふと気配を感じて振り返った。
「……誰ですか?」

編集:2009/11/24 22:52:32

No.757
2009-11-25 12:42:21

レッド・ロッド
「キアヤ、ホントに大丈夫か?屋敷に戻らなくていいか?」
「リューズさん、心配しすぎっすよ。いくら僕でも、もう少しくらいは・・・ジンさん、僕、どうなってますかね?」
 といっても、顔は若干青ざめ、目の光も乏しい。
 説得力まるで無し。
「喋らない方がいいって。キアヤの場合、クロスタトゥーで受けた傷は、一度少し浸食してから治ってくから。でも、もう傷のピーク越えてるから、あとは治るのを待つだけだよ。動かない方が身のためだけど」
 キアヤの耳をひっつまんでジンが答える。
「でもまあ、ヒュプノはヒュプノらしく、副作用で逝け、なんて、キアヤにしてはかっこよかったんじゃない?」
「そりゃ・・・まぁ・・・ヒュプノは使いすぎると血が回らなくなったりとか、発作起こしたりするし、それ酷くなると・・・それを早まらせることは難しくないですから・・・」
ーー♪~-♪
「・・・アラーム?着信?どっち?」
 着信は、ないだろ。
 質問したキアヤも思っていた。
 レッド・ロッド超能力部隊のメールアドレスや電話番号は、部隊のメンバーしか知らない。
 全員同じ場所に集結しているというのに、口で言わずにメールや電話で済ませるのも確実におかしい。
「私の・・・着信だ・・・」

No.758
2009-11-25 13:11:39

幽霊学校 第十五話【オッサン幽霊田中】
「やあやあ、バレてしまったかね」
暗がりから滑りでた人影に七紫は目を丸くした。よれよれのスーツにたるんだ腹。髪はだいぶ薄くなっている。―――典型的なオッサンだ。
「レゾンくんに君の護衛を頼まれてね。いやはやまさか気づかれるとは」
「田中……さん」
「覚えていてくれたのかね。嬉しいことだ」
オッサン幽霊の田中が笑うと、細い目がさらに細くなった。
「……護衛って…?」
「いや、大したことではないんだよ。君が来て間もなく、あの狩人も来ただろう?狩人が君を追っていたかも知れないってだけだ。まあ、レゾンくんならあの程度のやつは簡単に蹴散らすだろうがね」
何故か自慢げに鼻をならす田中。その半透明な身体は頼りない。
「…あの…何故田中さんが護衛なんですか…?」
「ああ、七紫くんは知らないのか。実は私は七不思議の幽霊の一人でね、私達はそれぞれ特殊な能力を持っている。私は守護、つまり《バリヤー》のような力だ」
「……花子さんもですか?」
「もちろんだとも。あの子は《呪縛》。相手の動きを封じる力だ。三つ子はどうやらお互いの心を完全にシンクロさせられるようだし、さくらちゃんは《痛み分け》、リリーは《予知》、大樹はちょっと変わった攻撃能力がある」
「六人………ですね………」
「は?」
「三つ子を一人として数えたら……六人」
田中の顔が曇った。
「そうだ…恐らく七不思議の七番目はいないのだろう。もし七不思議の全てが揃えばどうなるか…知っているかね?」
七紫は首を横に振ったが、薄々感づいていた。田中はたっぷりと間をおいて言った。
「………死、だと…言われている」

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