【SMILE☆】 二十九話
――― ねぇ、あなたはどうしてそんなに優しくしてくれるの?
それはね ―――
「つっ…ひぐっ……ぅっ…っ」
声にならない声を、押し殺して泣く。 自分の体はアッシュに包まれたままだ。
昔から私は、人によく抱きついていた。 人の体温、鼓動… 全てが温かくて、とても心地よく感じるからだ。 アッシュの胸に顔を押し付けていたら、段々落ち着いてきた。
「…アッシュ、もうだいじょ……」
言いかけた言葉は、アッシュにより一層強く抱きしめられたせいでとまった。
気のせいか、アッシュの体が少し震えている気がした。
…アッシュの心が、泣いてる―― ...ふいに、そう思った。
「アイラ…」
アッシュは、私の名前を呼んでしばらくすると、体を離した。
(ほんの少しだけ… 名残惜しいと感じてしまった。)
「アッシュ、ありがとね。私はもう大丈夫だから…。」
「アイラ、俺と付き合ってくれ。」
………え、?
「俺は、アイラの事が好きだ。…俺なら、お前を泣かせない自信がある。 …アイラが俺の事を好きじゃなくてもかまわない。 お前が泣くのを見るのは、もう嫌なんだ…。」
答えを出すのは、簡単だった。 アッシュはいつも私に優しくしてくれた。泣きそうな時、いつも隣に居てくれたのはアッシュだった。
…なのに、何で? どうして… ジュンの顔が今も浮かんでくるの…? あんなにヒドい事されたのに…。
そんな思いを振り切って、アイラはアッシュに言った。
「…ほんとに、私で良いの?」
「お前が良いんだ…。」
アッシュは、もう一度抱きしめてくれた。 今度は、私もアッシュの背中に手を回す。
どちらの物か分からない心臓の音が聞こえてきた。
さっきの切ないハグとは違って、甘くて温かかった。
☆★☆★☆
「……っ」
告白
(好きなのに、)(浮かぶのはあの人)