全然予告と違うけど、書いてみました(・∀・)
[落ちこぼれの魔法使い]
ロティ「落ちこぼれ魔法使いの少女」
ケステル「魔法使いの少年」
日差しの強い、ある夏の昼下がり。
草原に立つたった一つの巨木の陰に二人の子供がいた。
年は十代前半ぐらいだろうか。
一人は透き通るような白い肌、顔立ちは幼くぱっちりとした青い瞳が印象的で、艶やかな黒髪を背中あたりまで伸ばした小柄な少女だ。
着ている服は簡素で飾り気のない真っ白なワンピース。
もう一人は健康的な肌色、どこか大人びた顔立ちで切れ長のブラウンの瞳がよりいっそうそれを引き立てている。癖のある柔らかそうな短い金髪が唯一子供っぽい部分だろう。
飾り気は無いが、一目で良いものだと分かるシャツやズボンを身につけていた。
「ねぇ、ケステル」
少女が少年に語りかける。
鈴を転がしたような、とても綺麗な声だ。
「なんだい? ロティ」
ケステルと呼ばれた少年は少し低めの落ち着いた声で返事をしながら少女の方を見つめる。
「ケステルは『魔法』ってどうやって『使う』か知ってる?」
ロティはケステルの瞳をじっと見つめながら問いかける。
「そんなの、『呪文』を唱えるだけだろ?」
ケステルは少しも考える素振りを見せずに答えた。
その答えを聞いたロティは目を伏せ、悲しそうに呟く。
「違う。それは、魔法なんかじゃないよ……」
ロティは再びケステルの瞳を見つめる。
「呪文なんて無くたって、魔法は使えるんだ」
それを聞いたケステルは少し怒ったようにロティに問いかけた。
「じゃあ、君は呪文を唱えずに魔法を使えるっていうのか? ロクに魔法の使えない君が?」
「うん。使えるよ。」
ロティは力強く頷くと、その場にしゃがみ込んで、足元に生えていた少ししおれかけた花に手をかざす。
ロティはなにもいわない。
呪文も言葉も何も言わない。
だが、みるみるうちに少ししおれかけていた花が生き生きと花びらを広げ始めたのだ。
ケステルは目を疑った。
「そんな魔法が、何の役に……」
ケステルはそこで口をつぐんだ。
ロティの問うていた『魔法の使い方』の意味が少しだけ分かった気がしたからだ。
「ケステルにとっての魔法ってなに?」
「敵を倒してみんなを守るための力だよ」
「じゃあ、守りたい人以外は傷ついたってかまわないの?」
「え、それは……」
ロティの言葉はケステルの心に深く突き刺さったと同時に、疑問も生んだ。
──魔法って何のためにあるんだ?
「魔法は、壊すための力じゃない。創り出すための奇跡なの」
ロティはケステルの心を見透かしているかのように喋り出す。
「どういうこと?」
「私は、皆みたいにおっきな炎は出せないし、出したくない」
ロティはケステルの瞳をじっと見つめながら言葉を続ける。
「普通の傷なら魔法で治せる。
でも、心の傷や死んでしまった人はもう治せない」ロティは目を伏せ、しかし言葉は続ける。
「だから、だから私は、『壊すための魔法』は魔法だとは思えないの」
その時、ケステルは思った。
──ロティは、落ちこぼれなんかじゃない。
本当の『魔法』を使ってるのは、僕らじゃなくてロティなんだ──
「ごめんな、ロティ。」
ロティは謝られたことに驚いたのか、きょとんとした顔でケステルを見つめる。
「ロティは落ちこぼれなんかじゃないんだな。
なあ、ロティ。僕もいつかは本当の『魔法』、使えるようになるかな?」
ロティはにっこりと微笑み、しっかりと力強く頷く。
「うん。 誰にだって使えるよ!」
ケステルもそれにつられるように笑った。
日は少し傾き、大地は淡く朱に染まってきていた。
少年と少女は各々の帰る場所に向かって行った。
その幾年か後、青年へと成長した少年は、一流魔法使いとして巣立っ行くことにるのだが、それはまた別のお話。
またの機会に話す事としよう。
──End
(゜Д゜)