160話*(アリサ視点)【後編】
またミネラルタウンに朝がやってきた。今日は珍しく早起きして、近くに置いてあった、ピンクの可愛い手鏡の中の自分を見る。(今日も可愛いなあ、アリサってば!) 満足げに手鏡を置いて、リビングへと駆け出す。そこにはもうお兄ちゃんがいて、アリサは驚かそうと、途中でそうっとお兄ちゃんに近づいた。と、その時、お兄ちゃんの異変に気付く。眉間にシワを寄せて、神妙な面持ちでソファに座っていたのだ。アリサは怖くなって「……お兄ちゃん?」と声を出して尋ねた。するとお兄ちゃんの体がビクッと跳ねた。動揺しているのか、アリサの方へ振り向く動作がなんだかぎこちない。
「どうかしたの?」
「……アリサ、驚かないで聞いてくれる?ソウが、お引っ越しするんだって」
間を置くことなく告げるお兄ちゃんの言葉を信じられなかった。否、信じたくなかった。アリサは俯きながら下唇を強く噛み締め、再びお兄ちゃんの方へ顔を向き直す。
「そんなの嘘にきまってる!!ソウは今日も明日明後日もアリサと遊んでくれるんだもん!!そんなことっ……嘘だよ!!」
「アリサ!!」
気付いたら家を飛び出していた。もしかしたら、もう、居ないかも、しれないけど、ソウといつも遊んでた公園へ、いつの間にかアリサは走って来ていたようだ。公園の目印である大きな樹の下に座り込む。小さく溜め息を吐くと、目尻に溜まっていた涙が自然と溢れ出してきて、止めることが出来なかった。
――ソウ…
「アリサ!!」
「え……」
「良かった。ここにいたんだ。ミックが心配して、」
頭で考えるよりも先に、ソウに抱き着いた。感極まって更に涙が零れ落ちる。
「どうしたの?」
「……嘘なんでしょ?!引っ越すなんて!!」
「ミックから聞いたんだね。……嘘じゃないよ。遠いところに引っ越すんだ」
「っいやだ、いやだよぅ……」
「泣かないで、アリサ。可愛い顔が台無しだよ」
ソウはアリサの眼から零れ落ちる涙を拭いながら言った。
「僕には夢があるんだ」
「夢?」
「うん。困った人を助けられるような、そんな医者になりたい。だから、その夢を叶えるために都会へ行って勉強して、夢を叶えようと思ってるんだ。叶うかは分からないけどね」
「……ううん。叶うよ。ソウならきっと!」
「ふふ、ありがとう」
サアァ ――風がアリサたちの頬を掠めた。
「アリサ、ゆびきりげんまんしようよ」
『――たくさん泣いて、たくさん笑った木の下で、またきっと会いに来るよ』
絡まっていた小指が離れる。そして微笑むソウ。アリサもぐちゃぐちゃに微笑み返す。
「今までありがとう、ソウ!」
(きっとまた、会えるよね?)
続く*
一応アリサの過去編終わりです!次回はソウとアリサが五年の時を経て出会ったらへんから…だったかな?まあそんな感じで書いていきまーす(^ω^)(gdgd)