「そう、真夜中。」
私はローズ。最近この,雑草だらけの牧場に引っ越してきた。
以前の暮らしとは違い,不便でストレスのある生活。
だから,女神様の言うことに従い,きちんと101匹捕まえて,1年以内に帰ってしまおうと考えている。
恋なんてムダだわ。必要ない。
今日もそんなことを考えながらいつもの通り,青いベッドの中で横たわっていた。
だが,日ごろのストレスのせいか,ごわごわした枕のせいか,よく眠れなくて,少し外を散歩することにした。
古い時計をのぞくと,真夜中の1時。
まぁこんな田舎だから人ひとり居ないだろう,と思って小腹満たしの
おにぎりとカレーとぶどうジュースをリュックに詰め込んで,外に出た。
外の空気は,夏にしては涼しい。とりあえず,ゆったり歩きながら橋方面に向かった。左には色とりどりの草が生えている。前方には,光もなく,月明かりだけで道を進んだ。そして,橋を渡ろうとしたその時,
「♪~」
口笛が聞こえてきた。どうやら泉エリアから聞こえる。この歌なんだっけ? 確か,,,しずけさのうた?
曲につられて,泉まで行った。
泉の前には人影があった。暗くてよく見えないが座って月を見上げている。私が話しかけようとした時,口笛が止まり声がした。
「お嬢さん,こんな夜中に出歩いているなんて,感心しないなぁ」
! 気づかれていたのか。
「あ,あなたこそ!誰ですか?」
「俺はシュタイナー。怪盗。」
カイトウ? こんな時代に存在しているのか?
「えっ,怪盗って?何を盗むの?」
ふっ,とキザに笑った後
「んー。君のはぁと♪」
は…?
「冗談さ。お嬢さんはローズですね?君の心を盗んだりしないから,こっちにきていただけませんか?」
不審に思ったが,とりあえずシュタイナーに近づいていった。
月明かりに照らされた,少し気品の漂う美しい顔立ちの男性がこちらに悪戯な笑みを見せている。
「ローズ。」
名前を呼ばれて,少し戸惑ってしまう。シュタイナーが私に近づいてきてドキドキする。私の顔と彼の顔の距離が10cmくらいになって,
「フフ。眠れないんだよね。僕と明け方まで話そう。」
彼の言うとおりだから,彼との距離を離して,私も泉に腰掛けた。
彼は,時々,月を見上げて目を閉じていた。
「ねぇ,シュタイナーさん。おにぎりとカレーどっちがイイ?」
「僕は,カレーが大好きなんだ。カレーをいただくよ。」
私はカレーを彼に渡した。彼は,おいしそうにカレーを口に運ぶ。
それをなぜか見とれていた私に,彼はカレーののったスプーンを私の口に入れた。ビックリして,カレーをすぐ飲み込んだ。
「手作りのカレー,とってもおいしいよ。ありがとう」
そういって,微笑んだ顔もとても美しいものだった。
私はそれから彼と泉でのんびりしていた。別に会話も無かったが,そのかわり彼の口笛が響いて,心地よかった。
つづく。
誰か,続いてください(´Д`A;)